七飯町大沼国定公園が、Green Destinationsの「トップ100デスティネーション・ストーリー(持続可能な観光の実践ストーリー/優れた取り組み100選)」2026に選ばれました【大沼エデュケーションパークプロジェクト(OEPプロジェクト)】

北海道・七飯町の大沼国定公園から、世界に向けて嬉しいお知らせです。
大沼の「地域社会を基盤とした流域管理を通じて、湖沼保全と沿岸地域の繁栄を結びつける」取り組みが、Green Destinationsの「トップ100デスティネーション・ストーリー(持続可能な観光の実践ストーリー/優れた取り組み100選)」2026に選ばれました。
活火山・駒ヶ岳が生み出した湖沼群と、そこに息づく人々の暮らし。150年以上の歴史を刻んできたこの景勝地で積み重ねてきた、陸・湖・海をひとつにつなぐ環境保全の取り組みが、世界基準で評価されたのです。
今回は、このニュースの意味と、具体的にどのような取り組みが評価されたのか、そして大沼エデュケーションプロジェクト(OEPプロジェクト)がこれから大沼で描いていく未来について、ご紹介します。

Green Destinationsとは?世界が認める「本物」の取り組みの証
観光地の環境保全・地域貢献度を審査する国際的な仕組み
Green Destinationsとは、世界各地の観光地を対象に、持続可能な観光地づくりを支援・評価している国際機関です。
環境保全への取り組みや、地域社会への貢献度を国際的な基準で審査し、認証や表彰を行っています。「その土地らしさを守りながら、観光を通じて地域を豊かにしているか」——そんな観光地としての本質が問われる、非常に信頼性の高い評価制度です。
「トップ100デスティネーション・ストーリー」とは
Green Destinationsが毎年発表しているのが、「トップ100デスティネーション・ストーリー(持続可能な観光の実践ストーリー/優れた取り組み100選)」です。
世界各地の観光地で行われている、地域社会の取り組みや環境保護の好事例を100件選定し、世界へ向けて発信するというもの。いわば、「本当に持続可能な実践」として世界にお墨付きを与えられる、名誉ある選出です。
今回、大沼の取り組みは、このストーリーの一つに選ばれました。
大沼の「陸・湖・海をつなぐ流域ガバナンス」が評価された理由
活火山と湖沼群がつくる、150年以上の歴史を持つ景勝地
大沼国定公園は、渡島半島の中央、函館から車で約30分の場所に位置します。活火山・駒ヶ岳の噴火によって形成された大沼・小沼・蓴菜沼と、湖面に浮かぶ126の小島が織りなす風景は「日本新三景」の一つに数えられ、まるで広大な日本庭園のような美しさを誇ります。
150年以上の歴史を持つ日本最古級の観光地であり、2012年には国際的に重要なラムサール条約湿地にも登録されました。さらに下流域の鹿部町沿岸は、火山の大地と大沼湖の水系がもたらす豊かな栄養塩に支えられ、最高級の「白口浜真昆布」やホタテ、スケソウダラを産出する北海道屈指の漁場でもあります。
陸・湖・海を一体で守る、地域ぐるみの流域ガバナンス
大沼では長年、「アオコ(淡水赤潮)」による水質悪化が、美しい景観や伝統的なワカサギ漁、さらには下流・鹿部町沿岸の昆布漁にまで影響を及ぼすという課題を抱えていました。行政区分や産業分野の違いから、陸・湖・海を一体で管理する仕組みがなかったことが、最大の壁でした。
そこで地域は、七飯町や専門家、地域団体とともに「大沼環境保全対策協議会」を設立し、下水道・浄化槽の整備や、農地周辺への植林による水質改善を推進。2012年のラムサール条約登録を機に発足した「大沼ラムサール協議会」は、住民主体の水質モニタリング体制を構築しました。
なかでも地域の背中を押したのが、地元・七飯高校の生徒たちです。アオコを回収するロボットボートを自作し、回収したアオコを染料や着火剤として再利用する研究にも取り組み、その熱意が農業・観光業・漁業・行政をつなぐ対話のきっかけとなりました。
こうした取り組みの集大成として2022年に始まったのが、大沼エデュケーションパークプロジェクト(OEPプロジェクト)です。学びを観光・教育へつなげたことで、冬の「氷上ファットバイクツアー」の利用実績は3年間で10倍に、教育旅行の受け入れも年間1,000人を超えるまでに成長しました。
今回評価されたのは、まさにこの「陸・湖・海をひとつの流域としてとらえ、環境保全と地域経済、教育をつないだ」取り組みそのものなのです。


この選出を土台に。OEPが描く、大沼の未来
大沼エデュケーションパークプロジェクト(OEPプロジェクト)は、この世界に認められた大沼国定公園の自然環境をベース(土台)に、二つの取り組みを進めていきます。
「一次産業体験」から広がる、地場産業のブランド化と体験プログラム
OEPのプログラムは、一次産業体験、アウトドアアドベンチャー、環境教育、自然資源の保全と活用、自然観察、食育という6つのカテゴリーで構成されています。
このうち「一次産業体験」にあたるのが、大沼に根づいた毛皮のなめし産業や酪農、漁業といった地場産業です。OEPプロジェクトでは、これらの地場産業に「インタープリテーション」という手法を用いて、新たな付加価値を与えていきます。
インタープリテーションとは、自然や地域文化の「言葉にならないメッセージ」を、わかりやすい言葉に「翻訳」して伝える手法です。たとえば「毛皮」ひとつをとっても、ただの製品としてではなく、「山の命をいただくということ」「大沼の自然と共に生きてきた人々の知恵」として、その背景にある物語ごと伝えることで、商品の価値はぐっと深まります。
さらにOEPでは、単なる商品のブランド化だけでなく、この「インタープリテーション」という手法を使い、地場産業と絡めた自然体験型の教育プログラム・観光プログラムづくりにも力を入れていきます。毛皮職人から命の重みを学ぶプログラム、酪農の乳搾り体験、大沼の地形を活かした流山でのクッキング体験など——。単なる「見る・食べる」観光ではなく、大沼の自然と地場産業のつながりを、体験を通じて深く理解できるプログラムを、これからも生み出していきます。
世界へ届ける大沼の魅力、地域の人へ再発見してもらう価値
これらの取り組みを通じてOEPプロジェクトが目指すのは、大沼の魅力を世界に伝えることだけではありません。
地域に暮らす人々自身にも、当たり前だと思っていた景色や産業の中に、実はどれほど豊かな価値が眠っているのかを、あらためて感じてもらいたい——。それもまた、OEPプロジェクトが大切にしている想いです。

そんな「大沼の価値」に、外から光を当ててくれたのが、2026年9月に大沼を訪れた千葉商科大学人間社会学部 権 永詞(ごん・えいじ)先生とプロジェクトメンバーの学生のみなさんです。アドベンチャーツーリズムやサステナブルツーリズムが地域にどのような影響を与えているのかを調べるため、学生たちは5日間にわたって大沼に滞在。OEPは、地域の事業者や関係者など21の団体・個人へのヒアリングをコーディネートしました。大沼が、完成された観光地ではなく、地域のみんなで一生懸命に取り組んでいる「発展途上」の地域だからこそ、その歩みそのものを調査したい——。そんな想いで選んでもらえたことは、私たちにとって大きな励みになりました。
▶ 千葉商科大学の学生たちの大沼での調査記事は ⇒ コチラ
世界に認められた大沼国定公園という舞台の上で、地域の宝物を未来へつなぐOEPプロジェクトの挑戦は、これからも続いていきます。大沼国定公園で出会える「本物の学び」を、ぜひ体感しにいらしてください。
OEPプロジェクトの各プログラムの詳細は、以下よりご確認いただけます。
【大沼エデュケーションパークプロジェクト(OEPプロジェクト)】



