【大学フィールドワーク受け入れ事例】千葉商科大学がアドベンチャーツーリズムとサステナブルツーリズムを調査。大沼での5日間 【大沼エデュケーションパークプロジェクト(OEP)】

北海道七飯町・大沼国定公園で、千葉商科大学 人間社会学部 権 永詞(ごん・えいじ)先生とプロジェクトメンバーの学生13名が、アドベンチャーツーリズム(AT)とサステナブルツーリズム(ST)の調査実習を行いました。
調査のテーマは、「ATの推進が地域社会に与える影響について」です。大沼エデュケーションプロジェクト(OEP)では、学生の研究課題に合わせて、行政・観光事業者・学校・議会など21の団体・個人へのヒアリングをコーディネートしました。
- 期間:5日間(2026年9月21日〜25日)
- 参加:学生13名+指導教員
- 調査体制:4班
- ヒアリング先:21の団体・個人
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目次
- 千葉商科大学のアドベンチャーツーリズム(AT)・サステナブルツーリズム(ST)調査実習とは
- アドベンチャーツーリズム(AT)の調査地として大沼が選ばれた理由
- 北海道で大学のフィールドワークを受け入れる|OEPのコーディネート4ステップ
- 4つの班の調査|大沼のアドベンチャーツーリズム(AT)とサステナブルツーリズム(ST)を多角的に
- 最終日のワークショップと学生の気づき・提案
- 地元の声
- 今後について|教育旅行・大学フィールドワークの受け入れのご相談


千葉商科大学のアドベンチャーツーリズム・サステナブルツーリズム調査実習とは
研究の目標
今回の調査実習の目標は、「アドベンチャーツーリズム(AT)の推進が地域社会に与えている影響を調査し、その結果を地域に還元すること」です。
アクティビティ、自然、文化体験を組み合わせるATは、地域の新しい観光の柱として期待されています。一方で、それが住民の暮らしや事業者の経営、自然環境にどう影響しているのかは、現場に入らないと見えてきません。学生たちは、その「現場の実感」を集めるために大沼を訪れました。
5月から始まった事前準備
現地調査は5日間ですが、準備は5月から始まっていました。
まず4つのチームを結成。6月までは毎週、資料調査と先生からのフィードバックを繰り返しました。7月からは研究課題と仮説を設定し、話を聞くべき調査対象を絞り込んでいきました。
宿泊や移動の予約も、学生が「実務班」に分かれて自分たちで行いました。調査の中身だけでなく、旅の段取りまで自分たちの手で組み立てた点も、この実習の特徴です。
アドベンチャーツーリズムの調査地として大沼が選ばれた理由
完成された「先進地」ではなく、伸びしろのある地域
大沼は、ATの「先進地」として完成された地域ではありません。今まさに勢いがあり、伸びしろを持つ発展途上の地域です。そして、地域のみんなで一生懸命に取り組んでいる途中でもあります。
権先生が注目したのは、まさにこの点でした。すでに出来上がった成功例ではなく、「つくっている最中」の地域だからこそ、観光が地域に与える影響を生の声で捉えられる、という考え方です。
観光の「マネジメント体制」が築かれていくプロセスを調べる
観光地の国際的な基準では、地域で観光を管理・運営する「マネジメント体制」をつくることが求められています。七飯町でも、サステナブルツーリズムを進める体制づくりが、行政・観光事業者・観光団体などの間で進められているところです。
今回の調査の趣旨は、大沼がその体制を築いていくプロセスを、うまくいっていない部分も含めて調べることにあります。地域にとっても、外からの視点で現状を見つめ直す貴重な機会となりました。
駒ヶ岳をバックに小沼で湖上調査
北海道で大学のフィールドワークを受け入れる|OEPのコーディネート4ステップ
受け入れの流れ
今回の受け入れは、次の4つのステップで進めました。
① 大学が事前に研究課題・仮説を共有
各班の問いと仮説を、事前にOEP側と共有していただきました。
(班は「AT班」「ST班」「地域還元班」「地域特色班」の4つ)
② OEPが仮説に合う関係者を選び、マッチング・日程調整
七飯大沼国際観光コンベンション協会とOEPが、地域の事業者や関係者に協力を依頼。仮説を検証するうえで話を聞くべき相手を選び、日程を調整しました。
③ 現地でヒアリングとフィールド体験
ヒアリングは1件あたり30分程度で、学生の質問に答えていただく形で実施。あわせて、カヌーやサイクリングでフィールドそのものも体験しました。
④ 最終日にワークショップを開催
4日間のヒアリング調査・フィールド体験から得たものを整理し、4班合同のAT造成ワークショップを開催。
なお、受け入れ内容は、人数・目的・時期に合わせて一件ずつ設計しています。 今回の内容は、千葉商科大学の研究課題に合わせて組み立てたものです。
七飯町にある城岱牧場からのサイクリング
21のヒアリング先(分野別)
| 分野 | 数 | ヒアリング先 |
|---|---|---|
| 行政 | 3 | 渡島総合振興局 自然環境係/七飯町 生活環境課 自然環境係(ラムサール協議会事務局)/七飯町 商工労働観光課 |
| 観光団体 | 3 | 七飯大沼国際観光コンベンション協会/北斗市観光協会/湯の川温泉旅館協同組合 |
| 宿泊 | 3 | 鶴雅リゾートエプイ/函館大沼プリンスホテル/ユーカラグループ |
| 観光・アクティビティ事業者 | 4 | 山川牧場モータウンファクトリー/イクサンダー大沼カヌーハウス/はことれ/ATガイド(プライベートジム経営) |
| 交通 | 3 | 大沼交通/レンタルサイクル森商店/JR大沼公園駅 |
| 教育 | 2 | 大沼岳陽学校/七飯高校 科学部 |
| 議会 | 2 | 七飯町議会 澤出あきひろ議員/函館市議会 荒木あけみ議員 |
| 情報発信 | 1 | 大沼の観光情報サイト「ぐるっと大沼」運営管理者 |
| 合計 | 21 |
5日間の流れ
- 1日目 9/21(月):現地入りし、宿にチェックイン。
4班全員で七飯大沼国際観光コンベンション協会から大沼観光の全体像をヒアリング。夜はチーム別の作戦会議。 - 2日目 9/22(火):4班合同の体験
終日 AT・ST体験型調査
OEPとユーカラグループが連携して運営・販売するATツアーをモニター体験。
事業者側がATツアーをどのように構成し、運営しているかをお客様視点で体験する。 - 3日目 9/23(水):各班に分かれてヒアリング調査1日目
ヒアリングの合間に4班合同でカヌーから湖上観察。OEPが現在造成中の体験プログラム「ネイチャーエクスプロアリング湖上編」をモニター体験。 - 4日目 9/24(木):各班に分かれてヒアリング調査2日目
終日大沼街近隣+七飯町役場商工労働観光課+函館にて広域ステークホルダーのヒアリング調査
夕方から4班合同で函館観光(夜景やB級グルメ:ハセスト焼き鳥弁当、ラッキーピエロ、函館塩ラーメン)を旅行者視点で体験し、マッチング調査。
夜は4班合同でAT造成ワークショップ - 5日目 9/25(金):4班合同でAT造成ワークショップとヒアリング調査のふりかえり~帰途へ着く

ATツアー体験中に七飯町にある三嶋神社に参拝
4つの班の調査|大沼のアドベンチャーツーリズムとサステナブルツーリズムを多角的に
4つの班は、それぞれ異なる角度から大沼を調べました。なお、七飯大沼国際観光コンベンション協会と七飯町 商工労働観光課へのヒアリング、カヌーでの湖上観察は全班共通で行っています。
AT班|業種によって、ATへの期待とリスクの感じ方は違うのか
班の問い
AT・STに対する期待やリスクの認識は、事業者の業種によって異なるのか?
仮説の要点
宿泊・体験・土産物・交通では、ATに期待することも、心配なことも業種ごとに違うのではないか、という見立てです。
OEPがつないだヒアリング先
山川牧場モータウンファクトリー/鶴雅リゾートエプイ/函館大沼プリンスホテル/イクサンダー大沼カヌーハウス/はことれ・北斗市観光協会/ATガイド(ジム経営)
AT班 × 函館大沼プリンスホテル

AT班 × イクサンダー大沼カヌーハウス
サステナビリティ(ST)班|森と水辺、自然の守り方はなぜ違うのか
班の問い
① 大沼国定公園では、森林と水辺で自然の守り方(保存と保全)はどのように異なり、その違いはなぜ生まれているのか?
② 保存と保全の目的の違いによって、自然を次世代へ受け継ぐための取り組みの対象者や方法はどのように異なるのか?
仮説の要点
森林では手をつけずに守る「保存」、水辺では使いながら守る「保全」が軸になっており、その違いが観光客向けのルールや環境教育にも表れているのではないか、という見立てです。
OEPがつないだヒアリング先
七飯町 生活環境課(ラムサール協議会事務局)/「ぐるっと大沼」運営管理者/ユーカラグループ/大沼岳陽学校/渡島総合振興局 環境生活課自然環境係/七飯高校 科学部
ST班 × 渡島総合振興局 環境生活課自然環境係

ST班 × 大沼岳陽学校
地域還元班|観光の恩恵と負担は、地域にどう行き渡っているのか
班の問い
① 観光客に対する「歓迎度」は、事業者と住民で一致しているか?
② 高単価とされるAT事業は、地元事業者にとって、コスト面で無理なく続けられるビジネスモデルなのか?
仮説の要点
売上につながる事業者と、混雑やごみの影響を受ける住民とでは観光客の受け止め方に差があるのではないか。また、オフシーズンを含めた運営コストが事業者の重荷になっているのではないか、という見立てです。
OEPがつないだヒアリング先
澤出あきひろ 七飯町議会議員/「HPぐるっと大沼」運営管理者/函館大沼プリンスホテル/イクサンダー大沼カヌーハウス/はことれ・北斗市観光協会/荒木あけみ 函館市議会議員
地域還元班 × はことれ・北斗市観光協会

地域還元班 × 「HPぐるっと大沼」運営管理者
地域還元班|観光の恩恵と負担は、地域にどう行き渡っているのか
班の問い
① 地域住民と観光客は、町内の移動に何を使っているのか? 観光客はどこからどこへ移動しているのか?
② ATを目的に来る観光客は、町内をどのように移動しているのか?
仮説の要点
住民も観光客も移動の中心は車で、公園の中ではレンタサイクルや徒歩、ガイドの送迎を組み合わせているのではないか、という見立てです。
OEPがつないだヒアリング先
山川牧場モータウンファクトリー/JR大沼公園駅/大沼交通/レンタルサイクル森商店/はことれ・北斗市観光協会/湯の川温泉旅館協同組合
地域特色班 × 山川牧場モータウンファクトリー

地域特色班 × レンタルサイクル森商店
最終日のワークショップと学生の気づき・提案
5日間の実感を「ストーリーテリングの素材」に
最終日は、AT造成ワークショップで締めくくりました。
学生たちは、5日間で感じたことをツアーづくりのための「ストーリーテリングの素材」としてカードに書き出し、壁に貼ってつなぎ合わせていきました。ヒアリングで聞いた言葉、フィールドで見た景色や感じたことが、少しずつ一本の物語になっていきます。
学生から出た気づきと提案
- 「調べるプロセス」そのものをツアーに
地域でさまざまな取り組みが行われていることを、学生自身が調査を通して発見しました。そのプロセスを、大学の研究チームや旅行者がヒアリングを交えて体験するツアーにしてはどうか、という提案です。(エクスカーションツアー) - 地元学校「大沼学陽学校」の活動を、地元の人にこそ知ってほしい
全校生徒で参加する湖畔清掃や、5年生から中学3年生まである「大沼学」の研究から発表会までの取り組みを、地域の人にもっと知ってもらいたいという声が上がりました。 - SNSをもっと上手に活用できるのではないか
- コラボカフェなどのアイデア
キーワードとして挙がったのは、「アドベンチャーツーリズム」と「シビックプライド」
地域の取り組みを外の人が体験することで、地元の人の誇りにもつながる——そんな循環のイメージが、学生の言葉から見えてきました。
最終日のAT商品造成ワークショップ

地元の声 「こういう若者が来るのもいいもんだなぁ」
ヒアリングに応じてくださった地元の方々は、学生に向けて自分たちの取り組みを生き生きと語ってくださいました。若い世代に地域の取り組みを知ってもらえることへの喜びが、その表情から伝わってきました。
ヒアリングをきっかけに、学生と地域の方が連絡先を交換するなど、調査の枠を超えた交流も生まれています。
また、地域の方の話は、学生の見方を変えるきっかけにもなりました。
「ATの定義は人それぞれ」(函館大沼プリンスホテル)
函館大沼プリンスホテルの支配人は、「当ホテルでは、ハードルが低く展開できるコンテンツをATととらえている」と話します。セグウェイのようなアクティビティだけでなく、広大な敷地を散策するウォーキングも、一つのATと考えているそうです。
この話を受けて、学生はワークショップのカードに「ATの定義は人それぞれである」と書き出していました。
アオコは「悪いもの」なのか(七飯町 生活環境課)
ラムサール協議会の事務局を担う七飯町 生活環境課では、「アオコの発生は、必ずしも悪いことばかりではない」という話がありました。学生は、環境問題を一つの現象だけで判断せず、生態系全体のつながりの中で捉える大切さを学びました。
同時に、地域の人々や地元の高校生の間でも「アオコ=悪いもの」という見方が広く共有されていることに気づいたのも、印象的な発見でした。
自転車とカヌーをエコモビリティとして(レンタルサイクル森商店)
レンタルサイクル森商店でのヒアリングをきっかけに、学生は環境にやさしい移動手段(エコモビリティ)としての自転車とカヌーに注目しました。
最終日のワークショップでは、その視点を生かしたツアーを2つ考案しています。大沼公園をさまざまな角度から楽しむサイクリングツアーと、水辺の動植物やアオコの実態を湖上から観察するカヌーツアーです。
学生の調査を、住民にも(「HPぐるっと大沼」運営管理者)
「ぐるっと大沼」運営管理者は、地域の中では立場や利害、長年の経緯もあり、課題について腰を据えて話し合う機会を持ちにくい面があると話します。そうした中で、都会の学生が地域の課題を丁寧に調べ、深く考えてくれたことをうれしく感じたそうです。
学生からは、ジュンサイ沼でもアオコが発生していると教えてもらったといいます。学生が多くの関係者から聞いた話を、自分も聞いてみたい。その内容を住民にも共有できれば、人口減少が進む今、よりよい地域にするには何ができるかを住民自身が考えるきっかけになるのでは、と話していました。
今後について|教育旅行・大学フィールドワークの受け入れのご相談
学生の調査レポートは年内公開予定
学生の調査レポートは、年内に完成予定。完成しましたら、この記事にリンクを追記してご報告します。地域住民にとっても、大沼の観光や課題をを外の目から見つめ直す材料になるはずです。
ご協力くださった皆さまへ
お忙しいなか、ヒアリングにご協力くださった21の団体・個人の皆さまに、心より御礼申し上げます。皆さまが語ってくださった言葉が、学生たちの学びの核となりました。
受け入れのご相談はこちら
大沼エデュケーションプロジェクト(OEP)では、大学のフィールドワーク、教育旅行、行政・団体の視察などの受け入れをコーディネートしています。
アドベンチャーツーリズムやサステナブルツーリズムに地域ぐるみで取り組む七飯町・大沼だからこそ、行政・事業者・学校・住民まで、テーマに合った方々とおつなぎできます。
受け入れ内容は、人数・目的・時期に合わせて一件ずつ設計しています。
「こんなテーマで調べたい」「まずは相談だけ」という段階でもかまいません。お気軽にお問い合わせください。
▶ 大沼エデュケーションプロジェクト(OEP)へのご相談・お問い合わせ
https://guruttoonuma.net/spot/oep/

